無意識の偏見?「アンコンシャス・バイアス」に気付けるか

おつかれさまです!

私たちをとりまき、生活の中に浸透してきた様々な「用語」。なんとなく言葉を知ってる気がする。 でも具体的に理解してるか、説明ができるかと言われると…。 そんな「なんとなく」を「わかりやすく」言ってみよう、という試みの連載です。

「アンコンシャス・バイアス」。聞いたことあるけど、実はあんまり意味がわからない。言葉の意味はわかるけど、どういうことなのか具体的に言えない。今回はアンコンシャス・バイアスのなんとなくを掘り下げていきたいと思います。最後までお付き合いいただけると幸いです。

アンコンシャス・バイアスとは

まずは辞書での意味を調べてみます。 「人が無意識に持っている偏見」とされています。

人が無意識に持っている、偏見や思い込み。経験則によって、気づかないうちに身につけたもので、本人が意識しないところで、行動や意思決定に影響を与える。無意識の偏見。UCB(unconscious bias)。 https://www.weblio.jp/content/アンコンシャス・バイアス

無意識にもっている偏見とはどういうことでしょうか?無意識ということで、自分では気づきにくい偏見のことです。これまでの経験や、世の中の風潮から、知らないうちに持っている価値観です。 無意識ですから、当然自分では偏見を持っているつもりはなく、ピンとこないかもしれません。 例えば、下記のようなことが当てはまります。

  • 性別によって役割を決めることがある
    • 重いものをもつのは男性の役目
    • 料理をするのは女性の役目
    • 家族の中で「単身赴任」をするのは「お父さん」の役目
  • 最近の若い人はなってない
    • 最近の若い人はなってない
    • 〇〇〇世代は〜〜である
  • 血液型占い(A型は〇〇、B型は×✕という性格で…)

ここから偏見を外そうとすると、こういった視点になります。

  • 性別にかかわらず、重いものをもつのが得意な人、料理が得意な人がいる
  • 生まれた世代や時代によって、性質をひとくくりにはできない
  • 血液型で性格は決まらない

簡単に言ってしまうと、アンコンシャス・バイアスとは「より大きなくくり」で人を区別しているということです。 人それぞれに着目したときに、その思い込みを外す必要が生まれる、ということですね。

とくに性別に関する偏見は「ジェンダーバイアス」として、世間の様々な部分に根付いています。 偏見と聞くと、とっさに悪いことを想像しますが、悪いことばかりではありません。 考えのクセというのはつまり、自分の経験などから無意識のうちに、物事をスピーディに判断できるというメリットもあるのです。また、偏りを完全に取り除くことはできません。 とはいえ、無意識であるがゆえに配慮のない行動から誰かを傷つけることがあります。

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アンコンシャス・バイアスとマイクロアグレッション

なにかの呪文のような見出しですが、「無意識の偏見」そして「それによって誰かを傷つけてしまうこと」を指します。 無意識+傷つける ということで、言った本人には誰かを傷つけるつもりはありません。場合によっては、褒めたつもりで発言したことが、相手を傷つける結果になることがあるのです。

一例をご紹介します。先程の例に当てはめると、こんな発言になります。

  • 女性なのに力持ちですごいね。男性顔負けだよ。
  • 若いのにちゃんとやっているね。
  • 几帳面なんだね。やっぱりA型なの?

また、その他こんな発言も該当しそうです。

  • ハーフだから英語が得意なんでしょ?
  • 男性なんだから弱音を吐かずにがんばろうよ。
  • 女性に「彼氏は?」男性に「彼女は?」

これらは、言った人は、単なる日常会話として言ったことだと思います。また、場合によってはほめたつもりの言葉もあるでしょう。 しかし、言われた本人からしてみると、裏側にあるメッセージによって傷つくことがあるのです。 裏側にあるメッセージとは、たとえばどんなことでしょうか?

  • 女性は重いものが持てない。
  • 若いということは、ちゃんとできないのが普通。
  • A型は几帳面でなくてはいけない。
  • ハーフであれば必ず英語がうまいはず。
  • 男性は弱音を吐いてはいけない。
  • パートナーは必ず異性同士である。

言われた本人のなかには、自分を否定されたり、仲間はずれにされたと思う人もいるのです。 自分を否定されているとか、あるいは当人でも、自分がおかしいと思わされてしまうのです。 その結果、何も言わずにただ傷ついて終わり。あるいは、自分を偽ることにも繋がります。 本来の自分で生きることを否定されることは、悲しい経験となるでしょう。

記事を書いている私も、「左利きだから、きっと器用なんだね」と言われたことがありました。実際は器用ではないので、不器用がいけないことのような気がして、自分を否定されているような気がしました。ただ、そんなことを反論したら面倒くさいやつと思われると考え、何も言わないでいました。

「そんなことで傷つかないよ、普通」――傷つく自分は普通ではないのだ……。 「気にし過ぎだよ」――やっぱり、自分の考えがおかしいんだ。

はたらく上での偏見と差別にどう対応するか

このように、無意識な偏見は人を傷つけることがあります。 人を傷つけてしまう偏見=マイクロアグレッションがはたらく上で及ぼす悪影響について考えてみましょう。 さきほど、自分を否定されたり、そのために傷ついてしまうという例をあげました。

自分を傷つけた人を信用できなくなったり、近づきがたく感じたりします。 その結果、信頼関係が生まれにくくなります。 信頼関係が傷つけば心理的安全性は確保できず、職場の生産性は上がりにくくなることに繋がります。

「それなら、なにを言えばいいんだろう」と思う人も多くいるかも知れません。 知らず知らずのうちに言ってしまうことなので、仕方ないことでしょうか?

こういう発言を全く無くすのは難しいでしょう。なぜなら、無意識だからです。 しかし、未然に防ぐことはできなくとも、これから減らしていくことは可能です。 そのための3つの方法は、下記のようなことです。

  1. まずは知ること
  2. 周りが指摘すること
  3. 変化を認めること
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まずは知ること

アンコンシャス・バイアスと、マイクロアグレッションという存在をまずは認識すること。 知ることで、自分が気づきやすくなります。また、傷ついた人も、自分が傷ついたのはおかしいことではないと感じることができます。

周りが指摘すること

すべて自分一人で気づき改善することは難しいことです。だからこそ、周りの人や、言われた本人から伝えることが大事です。 そのときには、一方的に責めないことが大事です。伝え方を工夫するなどして、逆効果となることを防ぐ意識を持ちましょう。

変化を認めること

どうしても生まれてくるものを、未然には防げません。しかし、気づいたり指摘をすることで、二度目や三度目が起きにくくなります。 そして、言ってしまった人についても過剰に責めることはあまり良いことではありません。無自覚なことを過剰に攻撃すると、今度はその人が「この人は差別をする人だ!」と決めつけられ、被害者になり得ます。 人は変わることができます。また、全体の意識が変化していくことで、傷つけたり傷つけられたりすることが減っていきます(ゼロにはならないかもしれません)。その時、職場環境が良くなっていくことを実感できれば、よりよいサイクルが生まれていくでしょう。

まとめ

今回は長いカタカナ用語、アンコンシャス・バイアスとマイクロアグレッションについて掘り下げました。 すぐに変えることができず、長い目で改善することが必要なものです。

これもまた、ダイバーシティインクルージョン心理的安全性などと深い関わりがあります。 何に傷つくかをすべて想像することはできないからこそ、いろいろな視点を持ち寄り、それを認め知ることで、安心にはたらくことができるのだと思いました。 こうして書いている私ですが、この記事にもアンコンシャス・バイアスが存在しているかもしれないと思っています。しかしやはり自分では気づきにくいものです…。

記事に対するご感想・ご意見など、お気軽にお寄せいただけたらと思います。

それでは、また次回お会いしましょう。